18.4. ドキュメントのアップデート

ベースシステム、Ports Collection に加え、 ドキュメントも FreeBSD オペレーティングシステムの構成要素です。 FreeBSD ドキュメントセットの最新バージョンは、FreeBSD ウェブサイト から入手できますが、 ネットワーク接続が遅い、もしくはまったく接続できないユーザもいます。 幸運にも、各リリースで提供されるドキュメントをアップデートして、 最新の FreeBSD ドキュメントセットをローカルで維持する方法が用意されています。

18.4.1. Subversion を用いたドキュメントのアップデート方法

FreeBSD のドキュメントのソースは、 Subversion を用いて入手できます。 この節では以下について説明します。

18.4.2. Subversion およびドキュメントツールチェインのインストール

FreeBSD のドキュメントをソースから再構築するには、 かなり大きなツールのコレクションが必要です。 これらのツールは多くのディスク容量を必要とし、また、 すべての FreeBSD ユーザにとって有用というわけではないので、 FreeBSD ベースシステムの一部ではありません。 これらのツールは、FreeBSD のために新しいドキュメントを活発に執筆している方や、 頻繁にドキュメントをソースからアップデートする方に向けたものです。

必要なツールは、すべて Ports Collection で入手できます。textproc/docproj は、 FreeBSD ドキュメンテーションプロジェクトにより開発されているマスター port で、 これらのツールのインストールやアップデートを容易にします。

注意: ドキュメントの PostScript® や PDF 版が必要なければ、かわりに textproc/docproj-nojadetex をインストールすることも考えてよいでしょう。 このドキュメンテーションのツールチェインは、 teTeX と呼ばれる組版エンジンを除いたすべてをインストールします。 teTeX は大きなツールのコレクションです。 そのため、もし PDF 出力を本当に必要としなければ、 このツールをインストールしないことはとても賢明です。

textproc/docproj をインストールすると、Subversion もインストールされます。

18.4.3. ドキュメントのソースをアップデートする

ドキュメントのソースは、 Subversion プログラムを使ってダウンロードできます。 ダウンロードするには以下のように入力してください。

# svn checkout svn://svn.FreeBSD.org/doc/head /usr/doc

最初にドキュメントのソースをダウンロードするには少し時間がかかります。 ダウンロードが終わるまでお待ちください。

ダウンロードしたドキュメントのソースをアップデートするには、 以下のコマンドを実行してください。

# svn update /usr/doc

ソースを入手したら、/usr/doc ディレクトリの Makefile を使い、 以下のようにドキュメントをアップデートすることもできます。

# cd /usr/doc
# make update

18.4.4. ドキュメントのソースの調整可能なオプション

FreeBSD のドキュメントのアップデートとビルドシステムは、 ドキュメンテーションの一部のアップデートを簡単にするオプションや、 特定の翻訳のビルドに対応しています。 これらのオプションは、システム全般のオプションである /etc/make.conf ファイルや、make(1) ユーティリティに与えるコマンドラインオプションで設定できます。

以下がこれらのオプションの一部です。

DOC_LANG

ビルドおよびインストールの言語およびエンコーディングの一覧。 たとえば、英語のドキュメントのみを指定するには en_US.ISO8859-1 を設定します。

FORMATS

ビルドを行うフォーマット、または出力フォーマットの一覧。 現在は html, html-split, txt, ps, pdf, そして rtf に対応しています。

DOCDIR

ドキュメントをインストールする場所。デフォルトは /usr/share/doc です。

FreeBSD のシステム全般のオプションに関連するもっと多くの make 変数については、 make.conf(5) をご覧ください。

FreeBSD ドキュメントのビルドシステムで対応しているさらなる make の変数に関しては、 新しい貢献者のための FreeBSD ドキュメンテーションプロジェクト入門 を参照してください。

18.4.5. ソースから FreeBSD ドキュメントをインストールする

ドキュメントのソースの最新スナップショットを /usr/doc にダウンロードし終わったら、 インストールされているドキュメントをアップデートする準備がすべて整いました。

makefile の DOC_LANG オプションで定義されているすべての言語を完全にアップデートするには、 以下のように入力してください。

# cd /usr/doc
# make install clean

もし、ある特定の言語のみをアップデートしたいのであれば、 /usr/doc サブディレクトリで以下のように make(1) を実行してください。

# cd /usr/doc/en_US.ISO8859-1
# make update install clean

make の FORMATS 変数を設定して、 以下のようにインストールする出力形式を指定できます。

# cd /usr/doc
# make FORMATS='html html-split' install clean

18.4.6. ドキュメンテーション ports

ベースとなった作業:Marc Fonvieille.

これまでのセクションでは、ソースコードを用いた FreeBSD ドキュメントのアップデート方法について説明してきました。 しかしながら、すべてのシステムにおいて、 ソースからドキュメントをアップデートすることは難しいかも知れませんし、 できたとしても現実的ではないこともあります。 ドキュメントをソースから構築するには、 かなり大きなツールとユーティリティから構成される ドキュメンテーションツールチェイン が必要です。 また、Subversion リポジトリからソースをチェックアウトし、 チェックアウトしたソースからドキュメントを手動で構築する方法について、 それなりに熟知している必要もあります。 この節では、インストールされている FreeBSD のドキュメントをアップデートするもう一つの方法である、 Ports�Collection を用いた以下の方法について説明します。

FreeBSD のドキュメントをアップデートするこれらの方法は、 ドキュメンテーションエンジニアリングチーム が毎月アップデートしている ドキュメンテーション ports によりサポートされています。 これらの ports は、FreeBSD Ports�Collection の docs 仮想カテゴリにまとめられています。

18.4.6.1. ドキュメンテーション ports の構築とインストール

ドキュメンテーション ports では、 ports の構築フレームワークが用いられるので、 ドキュメントを簡単に構築できます。 この ports は、ドキュメントのソースを自動的にチェックアウトし、 環境変数やコマンドラインオプションを適切に設定して make(1) を実行します。 また、他の FreeBSD port, package のインストールと同様に簡単な方法で、 ドキュメントのインストールやアンインストールを行うことができます。

注意: 追加の機能として、この ports は ドキュメンテーションツールチェイン ports への依存を理解しているので、 構築時にはドキュメンテーションツールチェインも自動的にインストールされます。

ドキュメンテーション ports の構成は以下の通りです。

  • “マスタ port”, misc/freebsd-doc-en。 ドキュメンテーション port のファイルはここにあります。 この port は、すべてのドキュメンテーション ports のベースです。 デフォルトでは、英語の文書のみを構築します。

  • “すべてのドキュメントの port”, misc/freebsd-doc-all。 これは、すべての利用可能な言語のすべてのドキュメントを構築します。

  • 最後に、各言語のために “スレーブ port” が用意されています。たとえば、misc/freebsd-doc-hu はハンガリー語のドキュメンテーション port です。 この port は、すべてマスタ port に依存し、 各言語の翻訳されたドキュメントをインストールします。

ソースからドキュメンテーション port をインストールするには、 以下のコマンドを (root 権限で) 実行してください。

# cd /usr/ports/misc/freebsd-doc-en
# make install clean

英語版の分割された HTML 形式 (http://www.FreeBSD.org と同じ形式) のドキュメントが構築され、/usr/local/share/doc/freebsd ディレクトリにインストールされます。

18.4.6.1.1. 共通のオプション

ドキュメンテーション ports にはたくさんのオプションが用意されており、 ports の振る舞いをデフォルトの設定から変更できます。 以下はその中からいくつかをリストアップしたものです。

WITH_HTML

HTML 形式を構築します。 それぞれのドキュメントごとに単一版の HTML ファイルが構築されます。 整形されたドキュメントは、 article.htmlbook.html といった名前で、 画像とともにインストールされます。

WITH_PDF

Adobe® Portable Document Format を構築します。 Adobe Acrobat�Reader®, Ghostscript、 または、他の PDF リーダで読むためのものです。 整形されたドキュメントは、 article.pdfbook.pdf といった名前でインストールされます。

DOCBASE

ドキュメントのインストール先を設定します。 デフォルトのインストール先は /usr/local/share/doc/freebsd です。

注意: デフォルトのターゲットディレクトリは、 Subversion を用いる方法とは異なります。 なぜならば、この節で説明をしている方法では port を用いてインストールしており、 ports は通常 /usr/local ディレクトリ以下にインストールされるためです。 PREFIX 変数を使うことで、 このディレクトリ以外にもインストールできます。

以下は、上記の変数を用いてハンガリー語のドキュメントを PDF 形式でインストールする方法を示す、簡単な例です。

# cd /usr/ports/misc/freebsd-doc-hu
# make -DWITH_PDF DOCBASE=share/doc/freebsd/hu install clean

18.4.6.2. ドキュメンテーション package の利用

前節で説明した、 ソースからドキュメンテーション port を構築する方法では、 ドキュメンテーションツールチェインをローカルにインストールする必要があり、 また、ports の構築のためにディスク容量を必要とします。 ドキュメンテーションツールチェインをインストールするリソースがない場合や、 ソースから構築する場合には多くのディスク容量を必要とするため、 構築済みのドキュメンテーション ports のスナップショットが用意されています。

ドキュメンテーションエンジニアリングチーム は、毎月 FreeBSD ドキュメンテーション package のスナップショットをアップデートしています。 これらのバイナリ package は、システムに用意されている pkg_add(1), pkg_delete(1) などの package 管理ツールを用いて扱うことができます。

注意: バイナリ package を使うと、 インストールする言語に用意されている すべて の形式の FreeBSD ドキュメントがインストールされます。

たとえば、以下のコマンドを実行すると、 ハンガリー語のドキュメントの最新 package がインストールされます。

# pkg_add -r hu-freebsd-doc

注意: ドキュメントの package は、言語ごとに対応する port に lang-freebsd-doc の形式で名前がつけられています。 ここで、lang は言語コードの短縮形です。 ハンガリー語の場合は hu、簡体字の場合には zh_cn です。

18.4.6.3. ドキュメンテーション ports のアップデート

インストール済みのドキュメンテーション port をアップデートするには、 ports のアップデートツールが用意されていれば十分です。 たとえば、以下のコマンドを実行すると、 ports-mgmt/portupgrade ツールで、package だけを使ってハンガリー語のドキュメントをアップデートします。

# portupgrade -PP hu-freebsd-doc

本文書、および他の文書は ftp://ftp.FreeBSD.org/pub/FreeBSD/doc/ からダウンロードできます。

FreeBSD に関する質問がある場合には、ドキュメント を読んだ上で <[email protected]> まで (英語で) 連絡してください。
本文書に関する質問については、<[email protected]> まで電子メールを (英語で) 送ってください。